ローレンツ変換は、正変換及び逆変換出来ると言う要請から導かれるのではありません。

ローレンツ変換は、この前の日記に記した通り、高速移動に伴う物質の質量増加、物質を動かす4つの力の到達時間の変化、及び物質の収縮により導くことが出来ます。しかし、ローレンツ変換を、正変換及び逆変換が出来ると言う要請から導こうとする考え方があります。
絶対静止の一点を示すことが出来なければ、全ての運動は相対的なものとなります。私が前に歩いたのか、全宇宙が後ろに動いたのか分りません。Aが速度Vで動いていると考えると、Bは静止していることになります。逆に、Bが速度−Vで動いていると考えると、Aは静止していることになります。
従って静止系を特定出来なければ、光を変換しても逆変換しても、その速度がCとなることが要件となります。この要件より、ローレンツ変換を導けるとする考え方があります。
宇宙の中で、物質・光・4つの力の無い部分(真空)が真に何も無い空間であれば、絶対静止の一点を示すことは出来ません。何もない空間は、その位置を考えることが出来ないからです。又、物質・光・4つの力は移動するので、どれが静止しているのか特定することは出来ません。

しかし、一見真空と観測されても、そこには何かがあり特性を持っていれば、空間の位置を考えることが出来ます。超ひもが振動している時、その部分は物質・光・4つの力として観測されます。振動していない時、その部分は真空と観測されます。真空と観測されても、そこには超ひもが存在しています。光と4つの力は、この超ひも上を伝わります。真空には光と4つの力を一定速度Cで伝えると言う特性があります。この超ひもが静止系で、物質の運動とはこの静止系との位置関係です。

真空には何も無く、光と4つの力を伝える粒子が移動しているのであれば、それらの速度がCであることは説明出来ません。それらにエネルギーを加えれば、更に加速する筈です。それを回避する為に、「速度の合成則」により、高速移動すると時間及び空間が変換されるので、Cを超えることは出来ないと説きます。
しかし、ローレンツ変換では、移動する観測者は主観的に時間と空間が変換された様に思うだけです。静止者が見ると、光や4つの力は、幾らでも加速されることになります。
これに比べ、超ひもの上を物質と光及び4つの力が伝わると考えると、それらの速度はCを超えないことが分かります。超ひもの振動自体がCで伝わるので、何者もC以上で移動することは出来ません。
又、静止系を示せなければ、加速度や遠心力によりGが生じることも説明できません。宇宙に粒子が1つあるだけと想定すると、その粒子は動いているのか否か定義できません。他に比べる物質が無いからです。それなのに、その粒子には、現実に運動に応じた一定力のGが掛かります。つまり、他に物質がなくても、「何か」との位置関係に応じたGが粒子には掛かります。運動は物質と物質との相対的位置関係であるとする説では、他に物質が無いので説明出来ません。それに比べ、物質も超ひもの上を伝わると考えると、その「何か」は超ひもであり、物質の伝わる速さや角度に応じたGが掛かることが分ります。

静止系を見つけることが出来れば、逆変換は要件では無くなります。V慣性系において、速度−Vで移動するものは静止系です。静止系において、速度−Vで移動するものは−V慣性系です。静止系と−V慣性系は異なります。静止系においては、C加速出来ますが、−V慣性系ではC+V加速出来ます。両者が同一であることは必要ではなくなります。

従って、ローレンツ変換は、変換及び逆変換が出来ると言う要請から、求められるのではありません。変換及び逆変換が出来るだけなら、物質を動かす4つの力の到達時間の変化を表わすCATBIRD第二変換式、
t’=t*√(C^2−2VC*cosθ+V^2)/C、x’=x−Vt、y’= y、z’=z 
(x=Ct*cosθなので、説明し易い様t’=t*(√(C^2−(2Vx)/t+V^2)/C )とします。)
で十分です。
X軸のみ考えると、t秒後の光の位置(x,y,z)=(Ct,0,0)です。従ってCATBIRD第二変換式は、
①t’=t*(C−V)/C、x’=t*(C−V)、y’= 0、z’=0
となります。変換しても光の速度が一定となる為には、x’=Ct’とならなければなりません。①の通りその要件を満たしています。
今度は、Vを−Vにし、(x,y,z,t)と(x’,y’,z’,t’)とを入れ替えて、逆変換出来るかを検証します。
CATBIRD第二変換は、
t=t’*(√(C^2+(2Vx’)/t’+V^2)/C )、x=x’+Vt、y= y’、z=z’
となります。
t’秒後の光の位置(x’,y’,z’)=(Ct’,0,0)です。従ってCATBIRD第二変換式は、
②t’=t*(C+V)/C、x’=t*(C+V)、y’= 0、z’=0
となります。変換しても光の速度が一定となる為には、x=Ctとならなければなりません。②の通りその要件を満たしています。
従って、変換及び逆変換出来ると言う条件から導出される変換式は、t’=t*(C−V)/C、x’=x−Vtです。この式で、x=Ctと言う世界線は、x’=Ct’と言う世界線に変換されます。また、x’=Ct’と言う世界線は、x=Ctと言う世界線に逆変換されます。「変換を繰り返した時に、その結果の変換式の「形」が同じでなければいけないという原則」も満たします。

次は、2次元の平面で調べてみます。
CATBIRD第二変換式が、正変換で光速度不変の要求を満足するか、調べます。
⑤x^2+y^2+z^2=C^2*t^2
です。
⑥x’^2+y’^2+z’^2=C^2*t’^2
となるか調べます。
左辺=(x−Vt)^2+y^2+z^2=x^2−2Vtx+V^2*t^2+ y^2+z^2
右辺= C^2*t^2*(C^2−(2Vx)/t+V^2)/C^2)= t^2*(C^2−(2Vx)/t+V^2))= C^2*t^2−2Vtx+ V^2*t^2
−2Vtx+V^2*t^2は等しく消えますので、残るのは
⑤x^2+y^2+z^2=C^2*t^2
となり、⑥が常に成立し、CATBIRD第二変換式は光速度不変の要求を満足します。

今度は、CATBIRD第二変換式で、逆変換が出来るか調べてみます。
逆変換式は、
⑦x=x’+Vt’
⑧y=y’
⑨z=z’
⑩t=t’*(√(C^2+(2Vx’)/t’+V^2)/C )
となります。今
⑥x’^2+y’^2+z’^2=C^2*t’^2
は成立しています。そこで、
⑤x^2+y^2+z^2=C^2*t^2
が成立するか調べてみます。
左辺==(x’+Vt’)^2+y’^2+z’^2=x’^2+2Vt’x’+V^2*t’^2+ y’^2+z’^2
右辺= C^2*t’^2*(C^2+(2Vx’)/t’+V^2)/C^2)= t’^2*(C^2+(2Vx’)/t’+V^2))= C^2*t’^2+2Vt’x’+ V^2*t’^2

  1. 2Vt’x’+V^2*t’^2が等しく消えますので、残るのは

⑥x’^2+y’^2+z’^2=C^2*t’^2
となり、⑤は常に成立し、CATBIRD第二変換式の逆変換式は光速度不変の要求を満足します。
三次元でも同じです。Z=0となる様にθの角度を取れば良いだけです。
従って、xの変換式の分母に、ローレンツ因子である√(1−V^2/C^2)を付ける必要はありません。ローレンツ因子は、高速移動に伴う質量増加や物質の収縮の効果を表すものとして、導入されているのです。CATBIRD第二変換式で、xの変換式の分母に、ローレンツ因子である√(1−V^2/C^2)を加えると、ローレンツ変換となります。